ノア様の愛のいじわる



「んなっ……! 信じられない」


野愛に勝てる日はいつ来るんだろうか。

どこまでも、一枚上手な彼の上に立つことなんて、絶対に絶対に無理な気がする。

唖然としているわたしに構わず、野愛は【皇帝】指定の席に座る。


「苦手なのに一生懸命がんばってる瑠璃ちゃん見てたら元気出たわ」


大きな机に積まれている書類を弥生くんの方に放りながら、そんな意地悪を言うんだ。


「〜〜下手くそで悪かったねっ」

「別に悪いなんて言ってないよ。瑠璃ちゃんは俺の元気の源だってこと」


「野愛は人の失敗を笑うタイプの人種だ……! 最低!」

「別にほかの人はどうだっていいけど。失敗しようがしまいが瑠璃ちゃんの頑張ってる姿見て、俺も頑張れるわーって話な」


「…………っ、そーですか!」


なに、もうっ!!

意地悪かと思ったら、そうじゃなかったりする。

言葉の裏を返したら、少しだけ甘かったりする。

そんなの知らないし、わからない。


野愛って人は、本当になにを考えているのかわからない。