楽しそうにわたしの隣を歩く野愛。
その姿は紛れもなく、ただ普通の男子高校生だ。
学校の中にいると、フィルターがたくさんかけられて野愛の本当の核の部分が霞んでいる。
【皇帝】なんて名前を背負って、過ごしている。
その重さは、正直わたしにはわからない。
だけど、気を抜いたように隣で大きくあくびをしている野愛を見たら、そのままでいてほしいと思った。
「あ、もう駅着いたじゃん」
「えっ、あ、ほんとだ」
なんだかんだ時間は経っていて、駅に到着していたらしい。
わたしと野愛は反対方向の電車に乗って帰るので、ここでお別れだ。
「そんな顔して、ここで別れるの、残念?」
突然、にやにやしている野愛に問われて、びっくりする。
わたしの表情になにが表れていたのかわからないけれど、途端に恥ずかしくなった。
……別に寂しいなんて、思ってないし!
「ぜんぜん! むしろ野愛にいじめられなくて嬉しいよ」