ノア様の愛のいじわる



「どーしたの」


わたしの視線に気づいた野愛が、そう尋ねてくる。

いつもより口調が優しいのは気のせいだろうか。


学校外では【皇帝】でいる必要はないから、少し気を緩めているのかもしれない。

わたしの前では、野愛は野愛で、そのままでいてほしい。

意地悪でもいいから、みんなに向けるような王子様みたいな笑顔は向けてほしくない。


「……別に、なんでもないよ」

「ふーん、俺に見惚れてたくせに?」


「……っな?! 野愛の自意識過剰っ! ちがうし!バカ!」

「動揺しすぎだろ」


「〜〜っ!」


「ほんっと、瑠璃ちゃんってからかい甲斐あるよな」