ノア様の愛のいじわる



後ろを振り返らず、早歩きで帰ろうと歩を進める。

野愛のことだから、明日、メッセージを無視したことを問い詰めてくるはずだ。


……ううっ、それは憂鬱だ。


だけどやっぱり従順にはなりたくなくて、あまのじゃくにも反発しちゃう。

どうしたって可愛くないわたしは、野愛から逃げるしか道はないのだ。


そんなことを考えながら歩いて、学校から少し遠ざかったときだった。


「るーりーちゃん?」


真っ黒なオーラを背後に感じ、びっくりして後ろを振り返る。

そこには、満面の(恐ろしい)笑みを浮かべている野愛がいて。


あ、悪魔だ……っ!


反射的に後ずさるわたしを見て、野愛は一層黒い笑みを浮かべてくる。


「ん? 瑠璃ちゃん俺のライン無視したよな?」

「いや、その、……そうっ! スマホの電源がね!突然落ちちゃって!」



もちろん、嘘だけど……!

目を泳がせながらの苦し紛れの言い訳に、野愛はキョトンとする。