別に、気づいたところで何も変わらないだろうけれど。
野愛のことだから、ウンウン唸っているわたしを見て楽しんでいそうだし。
そんなこと言いながら結局彼の誘いを断らないのは、ほんの少しだけ、野愛がほかに見せない特別な扱いをわたしに向けてくれていることに嬉しさを感じているからかもしれない。
本当にわたしって、単純だ。
野愛とは、顔を合わせてもだいたい口ゲンカばかりしているくせに、わたしってば毎日従順にも【帝国】に赴いているんだもの。
やっぱりどこまでも野愛の言いなりだから、からかわれても仕方ないんだよね……。
はあっとため息をついて頭を抱えるわたし。
そんな様子を見て、ミヨちゃんはめずらしく飴をくれる。
「まあこれ以上、瑠璃がノア様のところばかり行っちゃうのも寂しいからこのままでいいかもね」
ミヨちゃんったら、真顔でそんなことを言う。
ツンデレな親友を持つと大変だ。
「うわん、ミヨちゃん大好き。結婚しよう」
「遠慮しとく」
「結局わたしが振られるんだね……?!」



