「ないないない。わたしに【妃】なんて荷が重いし、そもそもなれるわけないよ!」
「そう? 瑠璃ならできると思うけど」
「ミヨちゃん優しい……。でも、わたしは平和に過ごしたいんだよ」
それに、【妃】になりたい女の子は学園内にたくさんいる。
彼女たちの視線が痛くなるのは目に見えているし、わたしが願う平穏無事があっけなく消えてしまうのは明らかだ。
そんな危険を冒して【妃】になんてなれないし、そもそも野愛の彼女でもなんでもない。
わたしがふさわしくないのは目に見えているのに、野愛はなんでわたしなんかを【妃】にしたいと言ったのかは未だにわからない。
1ヶ月ほど前に、野愛はわたしに【妃】にならないかと聞いてきた。
ほとんど関わりがなかった彼にそんなことを言われて、わたしは相手が絶対君主の【皇帝】だということも気にせず即断ったのだけれど……。
それからというもの、今日のように毎休み時間呼び出されるハメになったのだ。
それを知っているミヨちゃんは憐れみながらも、たぶん、……いやきっと面白がっている。
だってほら、ちょっと口角あがってるもん。



