おもしろそうにクスクス笑う野愛。
わたしよりも格段にそういうことを踏んできてるのは考えなくてもわかること。
「だって……、野愛、怒ってるときとか嬉しいとき、……すぐに手出すじゃん」
「やめろよ、瑠璃ちゃん。
その言葉だけ聞いたら、俺が女たらしみたいになってる」
「でも、ほんとのことだし」
「ああ、このまえ瑠璃ちゃんの頰にほんの一瞬キスしちゃったこと、まだ怒ってる?」
「……ねえ、野愛、いま考えたらちゃんとそれセクハラだよ。わたし、訴えられるよ」
「あっは、好きなようにしなよ」
いじわるで、ぜんぜん掴めない。
近づいたと思ったら離れて。
離れたと思ったら距離詰めて。
ずるいよ、ずるい。
野愛は、いつのまにか壁を作って、わたしを自分の中に入れようとしない。
だから、追いかけたくなる。
もっと奥深くの野愛の心を、知りたくなる。



