「いつもいつも、野愛はわたしばっかりにいじわるする!」
ほら、もう、休み時間のロスタイムは半端じゃない。
【帝国】はわたしたちの教室と棟が離れているから、毎度授業に遅れないように全力ダッシュしている。
そんなわたしの努力を知っているのか、否か。
たぶん前者だけれど、そのおかげで50メートル走が以前よりいくらか速くなったのは、彼のおかげとも言えるかもだからあまり強くは言えなかった。
「そーだねえ。瑠璃ちゃんくらいしか俺、女の子の名前知らねえし」
「……そのくせ、慣れてるのはなんで」
わたしの頰を撫でる手つきや、目線の合わせ方。
ぜんぶ、意図的には出せない余裕があって。
これ、ほかの子にもやってる証拠になるでしょ。
「へえ? 俺が慣れてるとでも思ってんだ」



