「瑠璃ちゃんにノア様って言われると違和感バリバリなんだけど」
「……すみませんね、生意気な女で」
「いや、いいよ。生意気で上等」
野愛は、どこか諦めたような苦笑いを浮かべて言う。
ぜったいほかの生徒の前では見せない表情。
この学校のトップを飾る彼にしかわからない感情が現われる瞬間。
「てか、ほんと様付けってくだんねえし」
呟きながら笑ってる野愛。
みんなが崇めてるノア様は実は毒舌なんですよーってみんなに教えてあげたらどんな反応をするんだろう。
少し気になったけれど、そのあとが面倒くさそうだから実行しようとは思わなかった。
「野愛は鬼畜でサイテーでひどいひとだから、わたしは何されるかわかんなくて怯えてるから、ここに来た!これでいい?」
「瑠璃ちゃんダルいわ。俺、そんな酷くねえし」
「〜〜すぐにひとをからかうくせに!」
まあね、って目尻を細める野愛は、どこまでも色っぽくて余裕がある。
どうしたって同い年には見えないし、やっぱりこのひとは【皇帝】なんだって認めざるを得ないんだけど。
だからと言って、野愛を好きになることは絶対にない。



