離陸する際のエンジンの大きくなっていく音、宙に体が浮いていく感覚、パノラマのようにどんどん小さくなっていく街、絨毯のように広がる雲海、あの時のことを葵が思い出していると、彼方が言う。

「もしよければ、今度飛行機に乗ってみませんか?来月にお客様を初めて乗せる予定の最新機種があって、飛行テストをする予定があるんです。それに一緒に乗りませんか?お代はいりませんので」

「えっ、いいんですか?」

いつも眺めるだけだった飛行機に乗れる。そのことが葵の胸を高鳴らせていく。

「飛行機が大好きな水谷さんにだからこそ、乗ってほしいんです」

彼方が微笑みながらそう言い、葵は飛行機に乗ることを決めた。



それから二週間後、飛行機に乗る日がやって来た。葵はこの日のために新しいワンピースを買い、胸を弾ませながら空港へと走る。

「星空さん、おはようございます!」

「水谷さん、おはようございます。そのお洋服とても素敵ですね!」