素直になりなよ。


「…素直じゃないね?」


「…そんなこと…ない。」


「じゃあ俺のこと嫌いなの?嫌いなら、来ちゃダメだよ、男の部屋になんて。」


「…」


「彼女は、ホントにいないよ。今朝は俺、振ったんだよ。あの子のこと。」


「うそ。だって、付き合ってって言われて…最後に、いいよって返してたでしょ?」


「いいよって言ったのは、『これからも応援してる』って言われたから。だから『それならいいよ』って返しただけ。」


「…」


松田さんは、言い返す言葉を無くしたのか、そのまま黙って俯く。


本心を全部聞けた気がした。


「安心した?」


そう尋ねると、松田さんは黙ったまま、コクッと頷いた。


――抱きしめたい。


そう思って、ゆっくりと松田さんの背中に手を回し、抱き寄せてみる。


黙って俺の腕に抱かれている松田さんを見て、松田さんも俺と同じ気持ちだと確信した。


「久々の松田さん…」


屈んで松田さんの首元に顔を埋め、そう呟く。
久しぶりに松田さんの香りを嗅ぐと、一気に安心感に満たされた。

「こうやって、松田さんを抱きしめてたら、ずっとこうしてたいって思うくらい、落ち着くし、ドキドキする…。」


正直な気持ちを言ったのに「ドキドキ…するの?」と、松田さんはまだ半信半疑のようだ。


「そりゃ、好きな子を抱きしめて、ドキドキしないやつなんていないよ。」


しばらくの沈黙。


エアコンの音と、松田さんと俺の息遣いだけがやたらと聞こえてくる。