『俺が松田さんに近づけないじゃん。間にあると邪魔。貸して。荷物棚に上げるから。』
そう言うと、松田さんは耳を少しだけ赤く染め、リュックに顔を埋める。
かわい、と思った矢先、『…いや。』と言われ、またムッとする。
『なんで!?貸せって』
『やー』
『えー?』
松田さんに近づきたいって言ってるのに、ちっとも協力してくれる雰囲気がない。
そんな問答をしているうちに、電車が、発車してガタンと動き、松田さんの身体がちょっとよろめいた。
咄嗟に手を伸ばし、松田さんの身体を左手で支える。
すると…
「ありがと。」
そう言って、松田さんが今度は上目遣いで俺を見上げて御礼を言った。
顔が赤くなるのを感じながら、とりあえず軽く頷いて返答した。
――んだよ、もう!
こっち見たり、見なかったり…
その上、上目遣いしてみたり。
松田さんの行動1つ1つが俺をドキドキさせる。
急に松田さんに触れたくなり、できるだけ距離を詰めると、さっき支えた時に触った松田さんの腰あたりに、そっと左手を添えた。
チラッと松田さんを見下ろすと、耳まで真っ赤になってる。
嫌がっている時には絶対に見せない反応。
でも敢えて『嫌?』と聞いてみる。
ふるふると頭を振ったのを見て、ホッとして『今日は素直なんだ』と呟いた。
目的の駅にたどり着くまで、俺は松田さんに寄り添って過ごした。



