遅刻しそうな時に使う抜け道。
ここを通れば、松田さんと一緒にいても寮の管理人に気付かれることはない。
まさか、この抜け道を誰かに教えることになるとは思ってもみなかった。
『ココ。覚えといて』と言って、植木と植木の間の隙間を指差した後、『こっち。』と言って足早に寮の建屋まで導いた。
『男子寮?もしかして五十嵐くんって寮生だったの?』
『うん』と答えて、そのまま進んでいく。
寮の出窓は古いからか、外鍵が付いているタイプだ。リュックから出窓用の小さな鍵を取り出し、解錠して窓を開けた。
『ここ、俺の部屋』と言って中に入る。
振り返ると、目を大きくした松田さんが戸惑ったような表情を浮かべていた。
『もしかして…嫌?』
――これでもし、部屋に入ってくれたら…期待していいよな?
ドキドキと心臓の動きが大きくなる。
松田さんが慌てて頭を振ってくれたのを見て、更に心臓の動きが早まった。
――嫌、じゃないんだな。
差し出した手を握って部屋に上がってきてくれた松田さんを見て、ますます脈拍が上がった。
ローファーとリュックを松田さんから受け取り、窓際に置く。



