「あ、五十嵐くん!」
「はい?」
廊下を歩いてる途中で急に声をかけられた。
5組の教室から女子が顔を覗かせ、俺を手招いている。
――えっと…名前なんだっけ?てか急いでんだけど、何の用?
面倒だと思いながらも呼ばれたのでとりあえず5組の教室に入る。
「ね、五十嵐くん物理得意なんでしょ?」
「は?…まぁ。」
「この問題!分からないの。教えてくれない?」
その女子は顔を赤くしながら俺を上目遣いで見てそう言った。
――うわ、めんどくせー。
「…ちょっと俺、用事あって急いでんだけど。」
そう言いながらチラッと廊下を見ると、松田さんの後ろ姿が見えた。
――やべ、行っちゃう。
俺がいないからって、松田さん帰っちゃったりしないよな?
思わず追いかけようとしたら近くにいた同じサッカー部の斎藤に声をかけられた。
「五十嵐ー。教えてやれよー。井上さん、困ってるじゃん。」
ニヤニヤしながら言うあたり、楽しんでるな、コイツ。
チラッと井上さんとかいう人を見るとなんだか目をうるうるさせてこっちを見上げていた。
「斎藤が教えたら?」
面倒くさくて振ってみるも「俺、物理ニガテー」と呆気なく返される。
ふと廊下に目をやるとちょうど物理担当の先生が歩いてくるところだった。
「ほら、先生来た。俺より先生に教えてもらいな。」
じゃあな、と言ってその場を離れた。



