足早に保健室へ向かい、久保田先生の姿がないのを確認してから、急いでベッドのある保健室の奥へ向かった。
『松田』と書かれた上履きを確認してから、ベッドの下にバッグを押し込み、カーテンを開ける。
『…寝た?』
声を掛けたけど、返事はない。ダークブラウンのセミロングの髪を見て、引き寄せられるようにしてベッドに踏み込んだ。
ベッドが軋む。
そのまま手を伸ばして松田さんの頭を撫でると、少しだけ体がピクッと動き、寝息が止まった。
――起きた?
そう思ったけど、まだ横になったままの松田さんを見ると、確信が持てない。
布団の端をめくると、松田さんのあの香りが漂ってくる。
『相変わらず、いい香りするな…』
思わず呟いた。
肘をついて松田さんの隣で横になり、頭を撫でながら、早くもウトウトしてくる。
松田さんの体温で温まった布団で、雨で冷えた足が少しずつ温まっていく。



