中々キスをしないあたし達を見兼ねた鳩田くんは、「八枝ー」と、出口から八枝さんを読んだ。
ひょこっと顔を見せる八枝さん。そんな八枝さんに、鳩田くんはカメラを預けた。
…………なんだろう、めちゃくちゃイヤな予感がする。
鳩田くんはあたし達の後ろに回り、『さっさとキスせんかい!』と、あたしの頭と塁くんの頭を持って顔を向かせた。何が起こっているのかわからないまま、塁くんの口があたしの口にゴツンと鈍い音を立てて重なった。
その瞬間、八枝さんから「ナイスー!」という掛け声と共にパシャッとシャッターが切られた。
唇をパッと離すと、塁くんは怒りに満ちた表情をしていた。
「そもそもこんな言い伝えなくても、オレ、しーちゃんとずっと一緒にいるし。おまえらふざけんなよ」
怒りに震える塁くんにビックリしたように鳩田くんと八枝さんはビクついている。
…………優しい塁くんを怒らせてしまったファーストキスは一生涯忘れない。
やっぱりムードは大切だ。
「おい、しーちゃん、ヒロキに魔法の言葉かけて!!」
あまりの恐怖に腰を抜かした鳩田くんは、あたしに対して無茶振りをしてきた。



