「うん!」
塁くんがキスをしたくないわけじゃないと知ることができたのは、文化祭があったからだ。鳩田くんが強力の味方になってくれて、八枝さんが推してくれるなんて夢にも思わなかった。キス以上に得たものがあたし達にはある。
塁くんに大きく頷き、外に出ようとした瞬間、受付をしていたはずの鳩田くんが出口からカメラを持ってあたし達の前に現れた。
そして、
「キスは? まだだろ? ファーストキス」
カメラを構えてあたし達の元へ詰め寄る。
「キ、キスは……やっぱりいいかなって。な、しーちゃん……」
「う、うん……また、今度で大丈夫……」
「ファーストキスしなきゃ出れないんだけど? 説明しましたよ?」
「い、いや、だからキスは――つーか、そのカメラはなに!!」
「撮影するに決まってんじゃん。そんで結婚式で流すに決まってんじゃん。俺、代表スピーチする気満々だし、誓いの証拠を残しておかなきゃだろ!」
頑として退く気配がない強力な味方の鳩田くんは、凄まじく厄介だった。



