カレシの塁くんはあたしの唇を求めてない




八枝さんはあたしを見るなり、入る間際に耳元で「塁くんが兼元さんに溺愛してるのカワイイから推したげる」と囁いた。


再度八枝さんに目を向けると、『頑張れ、しーちゃん』と、ガッツポーズをしている。


イヤな顔をさせてしまうんだろうなと思っていたからまさかの展開になってしまった。八枝さんには申し訳ないことをしたなと思いつつも、八枝さんが応援してくれるのが嬉しくて仕方がない。



認めてもらえるってこんなに嬉しいことだったんだ……


塁くんに手を握られお化け屋敷内を進むも、仕掛けが分かってしまっているあたし達は驚くことができない。



塁くんは仕掛け人のクラスメイトたちに、

「お疲れ様でーす。オレの大好きなしーちゃんです」


と、紹介をしながら先へ進む。むしろ、あたしと塁くんを見た女子達が驚いていて悲鳴を上げていた。



塁くんが一番怖がらせているかもしれない。



ものの数分歩くともう出口になってしまい、完全にキスするタイミングを失ってしまった。横で痛いくらいに手を握ってくれている塁くんは、不満気に声を漏らした。



「やっぱりムードってあるよな。仕掛け分かってて別に驚かないし、なんなら、誰がどの役かまで分かるし。まあ、しーちゃんが大好きだって皆に伝えられたから良いか!」