塁くんとの呼び込みの当番が終わり、何かを決心した顔をする塁くんに手を引かれ、自分達の出し物の、受付の前に立った。
「キスしないと出れませーん」
魂が抜けたような目であたしを見る八枝さん。そんな八枝さんとは真逆のリアクションを見せる鳩田くん。
「ヨッシャ! 客として姿見せないなら、叩き連れてでも来させる気でいたわ。えー、では、尋問をしまーす。じゃあ兼元は俺。よろしく」
手を差し出され握手をする。
そんなあたし達を見た八枝さんは「そのテンションうざ」と、塁くんに白い目を向けた。
あたしと塁くんのことを知っている鳩田くんに特に何も話すことはない。ギリギリ塁くんたちの話し声が聞こえる位置まで近づくと、塁くんは何かをしきりに八枝さんに説明していた。
耳を澄ましてみる。
「――っつーことがあって、オレはしーちゃんを好きになったわけ。だから志望校をしーちゃんと同じ高校にして……」
あたしのことを『しーちゃん』と呼びながら、好きになってくれた経緯をなんと三十分もかけて、長々と説明していた。
八枝さんは顔を赤くしながら「しーちゃんを好きなのは分かったから、もうわかった。中へどうぞ」とそれとなく誘導し始めた。



