カレシの塁くんはあたしの唇を求めてない




すると、塁くんはそっと手を差し伸べてくれた。


「…………ごめん、つい」


申し訳無さそうに微笑む塁くんに対して、ブンブンと首を横に振る。



「塁くん、あたし……お化け屋敷入りたい」


「…………え?」


「その、うちの学校……言い伝えみたいなのがあるんでしょ? だったら塁くんとこの先も一緒にいたいから……その……文化祭でキスできるなら入りたい……」



「あたしとキスしたくないかもしれないけど」と後付をすると、塁くんは顔を赤くして「あーもう」と座り込んだ。



「オレも文化祭のジンクス信じてた。だから、今までキスできなかった。しーちゃんが前、手をつなぐ以外のこともしたいって言ってくれたの答えられなくてさ、すごいモヤモヤしてた。伝えるのが遅くなってごめん」


塁くんは、あたしの唇を求めていないわけではなかった。