カレシの塁くんはあたしの唇を求めてない




「あのっ! 学校内の案内人があっちにちゃんといるんで、そこで案内してもらってください! あたし達は呼び込みに忙しいので!」


少し強く言うと、「はあ? あんた関係なくないー? 邪魔しないでくれる?」と、強気に言われてしまった。


関係なくはないけど、言い返すことができない。


『付き合っている』と、本当のことが言えないのが苦しくてもどかしい。


そんなあたしを見ていた塁くんは、「オレたちのクラス、ラブラブお化け屋敷っていうのをしてまして、気になってる人と入ったら永遠に結ばれるんです」と、女性客に真剣な顔で説明をした。


『永遠に結ばれる』


塁くんの口からこの言葉が出てくるとは思わなかった。……ということは、塁くんも、うちの学校は文化祭中にファーストキスをしたら永遠に結ばれるという噂を信じているんだ。


「――で、オレ、この子と入りたいと思ってるんで、お……オススメです」


塁くんはあたしの手を握り恥ずかしそうに俯いた。



『この子と入りたい』


嘘でもそう言ってくれたことが嬉しくて、上がりそうになる口角を必死に堪える。



「……あ、へー」と納得いかない顔をされた。女性客は塁くんの元から離れ別の場所へ向かってくれた。


一気に腰が抜けヘタヘタと座り込む。