カレシの塁くんはあたしの唇を求めてない




鳩田くんの提案に、


「…………キスって、なに?」


塁くんは唇を尖らせた。


…………そうだ。大事なことを忘れていた。塁くんはあたしとキスしたいわけじゃない。


塁くんは、


あたしの唇なんて求めていない。


一番大事なことを忘れていた。塁くんがどれだけあたしを好いてくれていたとしても、キスをしたいということとは別の感情なんだ。


鳩田くんには申し訳ないけど、あたしは塁くんと一緒に文化祭は回れない。





お化け屋敷を急遽「ラブラブお化け屋敷」に変更して文化祭のセットを作り上げた。


受付兼尋問係は鳩田くんと八枝さんがすることになり、他の人は交代でお化け役をしたりセットを動かしたりをすることになった。塁くんとは変わらず頻繁に電話はしていたが、うちのクラスのお化け屋敷には触れることなく、お互い「一緒に回りたい」と言うわけでもなく、文化祭当日を迎えることになった。


塁くんとあたしはお客さんの呼び込み係になり、校舎の外に出て「一年A組でお化け屋敷をしていまーす!」と呼びこんでいた。