カレシの塁くんはあたしの唇を求めてない




たしかにそうだ。あたしはさっきから何を言っているんだろう。そう思うと情けなくなった。



あたしが心配しているのは、塁くんを想っている女の子のことではなくて、自分のことだ。  



……自分のことばっかりだ。



自覚をすると恥ずかしくて唇を噛みしめる。そんなあたしを見た鳩田くんは「俺、看板製作者だから自由に変えれる権利あるし!」と、ノリノリ気味にまた、あたしの手を引いて走り出した。



あたしと塁くんをくっつけたい鳩田くんは、本当に看板を描き直している。その看板をクラスの皆に見せ、ドヤ顔を放っていた。



題して『永遠に結ばれ続ける、ラブラブお化け屋敷』と、なんともこっ恥ずかしい名前が書かれてあった。


「お化け屋敷急遽変更しまーす! 俺が女子側の尋問役で、八枝が男子役の尋問役! 相手のことをどれくらい想っているか愛が伝わったら、入場を許可し、キスしなければお化け屋敷からは出れませーん!」


興奮しながら声を上げる鳩田くん。


女子はそういうのが好きなのか、意外にも『おもしろそう! いいじゃん!』とノリ気だ。



皆、このお化け屋敷はあたしと塁くんのためにあるものだと分かっていない。