「そりゃあ、ヒロキを好きなヤツは、ヒロキが好きな女の存在なんて邪魔に決まってんじゃん。オモロイこと言うねぇ、兼元はー」
ケタケタと笑いながら、アイスが入ったビニール袋を私から取り上げた鳩田くんは、両手が塞がってしまった。
「お化け屋敷さ、」
「…………へ?」
「俺たちの高校って昔から『文化祭に初キスした男女は永遠に結ばれる』って言い伝えあるらしくてさ。でも、そんな空気になかなかなり辛いじゃん。だから、俺たちが開催するお化け屋敷を、気になってる男女やカップル限定にして、お化け屋敷から出る方法をキスしたら出れるようにすればいいじゃん?」
平然と言ってのける鳩田くんに対して、あたしは思考が固まってしまった。
……キ、キス!?
鳩田くんには、あたしが悩んでいたことがバレているような気がした。
「き、気兼ねなくって……塁くんと入りたい人なんて山のようにいるでしょ??」
「でもヒロキは誰でもいいから入りたいわけじゃないじゃん??」
鳩田くんの的確な返しにぐうの音も出ない。



