男子をいいように使っているように見せかけて、実は使われていた塁くん。何とも言えない気持ちになった。
それでも律儀に『付き合っていることを内緒にしてほしい』を守ってくれている。だとしたら、今この場で鳩田くんに『塁くんと付き合っている』なんて言うべきではない。
よって、どうリアクションを取れば良いのか分からなくなってしまったあたしは、鳩田くんに返す言葉が見つからずにいた。
鳩田くんが必要とするペンキのインクを購入し、帰りに学校近くのコンビニで皆の分の差し入れを購入した。
「でもさー」
コンビニから出ると、鳩田くんはため息を吐きながらあたしに話しかけてきた。
「実は俺も兼元狙いだったんだよなー。絶対性格良さそうじゃん、兼元ー。兼元に好意をあるやつを一瞬で諦めさせるヒロキズルイって思ったよなー」
「あ、もう今は好意とかないから安心して」と後付をする鳩田くん。塁くん以外に好いてくれる人がいたんだとビックリした。
「……あ、ありがとう」
「おう! はー、言えてスッキリー」
塁くんは男子にカミングアウトしたけれど、あたしは女子にカミングアウトをできていない。けれど、特別可愛くもないあたしが「塁くんが好きだから協力してください」と女子にお願いするのは何か違う気がする。



