「…………」
先走ってしまった。なんでこんな恥ずかしいことをどさくさに紛れて自分から言ってしまったのだろう。
隣を歩く塁くんにまた視線を向けると、塁くんはなんともいえない困った表情をしていた。
その表情を見て後悔した。言うんじゃなかった。隣を歩くのも気まずい。
かといって、塁くんがあたしを一人にさせるわけもなく、なんども自分から「やっぱり一人で行ける」と言おうとしただろう。そんなあたし達を見ていたかのように、背後から「ヒロキー!!」と、塁くんの名前を叫んだ人物によって、あたしも塁くんも足を止める。
後ろを振り向くと、鳩田くんが息を切らしながら塁くんの元へと走ってきた。
「作ってたセットが壊れたって! ヒロキ、すぐ戻れ!」
「はあ??」
「つーことで、兼元さんごめん! ヒロキ借りてくわ。買い出しヨロシク!」
「じゃあ!」と、片手を上げジェスチャーをする鳩田くん。そんな鳩田くんに向かって塁くんは「ふっざけんな、てめぇ、しーちゃんを一人にすんな!」と、膝を一蹴りしていた。



