カレシの塁くんはあたしの唇を求めてない





「塁くんと普段遊びに行けないし、電話でしか話せないから。近くにいる八枝さんに嫉妬した……」



「ごめんなさい」と、罪悪感でいっぱいになっているあたしの小指を塁くんはギュッと掴んだ。



「しーちゃんの隣の席の谷口とか、オレの方がいつもたくさん嫉妬してる。だから八枝に嫉妬してくれてて嬉しい」


「あたし、八枝さんに意地が悪いこと思っちゃったんだよ。こんなあたし、イヤでしょ?」


「嫉妬して、少し嫌なこと思ったってだけだろ。全然イヤじゃない。むしろ、イヤなところあったらオレ、しーちゃんに伝えるから。だから、しーちゃんもオレにイヤなところあったら伝えて。すれ違いでギクシャクして関係が上手くいかない方がオレはイヤ」


「……うん」


塁くんみたいな心の余裕があたしにはない。隠し通していたけど、いつも塁くんに近づく他の女子に焦って嫉妬した。



今なら本音を伝えてみてもいいだろうか。



「あたしもっと塁くんと、その……手を繋ぐ以外にも色々したくて……手繋ぐからの進展がないのも焦っていたのかも……」