カレシの塁くんはあたしの唇を求めてない




靴箱でローファーに履き替え、塁くんと一緒に学校を後にした。こうやって隣を歩くのも久しぶりだ。


ドキドキと胸を高鳴らせていると、あたしの指に塁くんの指が触れた。


…………ドキンと、より一層胸が高鳴る。恥ずかしすぎて塁くんの顔が見れないでいると、塁くんは、


「しーちゃん」


とあたしの名前を小さく囁いた。見れないでいた塁くんに視線を向けてみると、塁くんも恥ずかしそうな表情であたしを見ていた。



なんともいえない空気があたし達を襲う。



「――あの、塁くん、さっきはごめんね。あんなところ見せちゃって。幻滅……した?」



傷口に塩を塗るようなことを自ら聞く。そんなあたしに塁くんは「何言ってんの」と、頭をポンポンと撫でた。



ここでやめとけばいいものの、


「塁くんにキッパリフラレてる八枝さんを見て安心した。塁くんはあたしのカレシだから、もう塁くんに近づかないでって思っちゃたの……」


罪悪感からか、話さずにはいられなかった。