「モルヴァン嬢具合はどうだ?」

 閣下が我が家に……いますわ。本当に来てくれましたのね。



「……ご覧の通り回復いたしました。昨日はご迷惑お掛けして、さらに送っていただいて申し訳ありませんでした」

 お花とお菓子を持ってお見舞いにきてくださった閣下に申し訳なさが募る。ただの貧血のようなものなのに。


 我が家の中庭にはガゼボがあって本日は閣下と二人でお茶を飲んでいます。
 お母様が天気がいい日はガゼボに限るわね! と準備をしてくれました。使用人達は離れた場所で待機しています。


「迷惑ではない私が勝手にした事だ。昨日は視察の途中で盗難事件があって解決した後だったんだ」

 平和そうに見える王都でも物騒な事件がありますのね。


「閣下、あまり無理をなさらないで下さいませね。お仕事の途中でしたのにわざわざ送ってくださらなくとも良かったのに……お仕事を放棄してしまって、部下の方達に示しがつかないのでは……」

 私のせいでお仕事に支障があったらどうしましょう。


「モルヴァン嬢を助ける事で仕事を放棄した事にはならない。人助けは騎士として当然の事。犯人を自警団に渡してきたから文句を言うものは誰もいない」


 ……人助けは騎士として当然。胸がまた痛んだ。そうよね、たまたま会っただけだもの。

「閣下にはご迷惑ばかりかけていますわね」

 傘を借りたり、送ってもらったり……学園では卒なくやってきた自負があるだけに、落ち込んでしまいますわ。みっともないところばかり見せて……