いつも側にいてくれたね



駐車場に集まっていた人たちが去っていくと、この世界に一人ぼっちになってしまったような気がして不安で仕方なかった。

ホテルに帰るバスの出発時刻が迫っている。

綾乃に連絡しなきゃ。

きっと私を探してる。

スマホの画面を直生の番号から綾乃の番号に変えて、通話ボタンを押すと何回目かのコールで綾乃が通話に出てくれた。

『ちょっと夏芽、今どこにいるの? さっき急に走り出したからどうしたのかと思ったよ』

「綾乃・・・。ごめん。今、外にいるの。駐車場の所」

「駐車場って、どこにいるの? バスの近くまで来てるの? もう発車しちゃうから早くおいでよ」

私は木の陰からバスが見える所まで移動して、綾乃に分かるように右手を振ると、綾乃が私に気付いてくれた。

綾乃は私が泥棒を追い掛けて外に出てきたことを知らないんだね。

泥棒の話をしたら心配されちゃうから内緒にしなきゃ。

「あのね、綾乃。私、駐車場で派手に転んじゃってね、少し腕を擦りむいてしまって」

「えっ? 夏芽大丈夫なの? とにかく早くバスまで来て。私、バスの運転手さんに待っててもらうように言っておくから」

「うん、ありがとう綾乃。すぐ行くね」

「今、永井くんに夏芽のこと迎えに行ってもらうね」

綾乃は私との通話を切り、私のいる方を指さして永井くんに私の居場所を教えている。

私のところに駆けてきてくれた永井くんがピタッと私の少し手前で立ち止まった。

「え? 高田さ・・・ん? どっ、どうしたのそれ! 大丈夫なの?」

どうして永井くんはそんなに驚いているんだろう。

少し擦りむいた程度なのに。

「大丈夫だよ。来てくれてありがとう。勝手に外に出ちゃってごめんね」

「ちょっ、待って! とにかくこれを羽織って」

永井くんが、着ていたジップパーカーを脱いで私の肩にかけてくれた。

「え、永井くん。大丈夫だよ。永井くんが寒くなっちゃう」

「いやいや、高田さん。自分の姿分かってる? 自分の服とか見てみなよ」

私の服? 少し血が付いただけだよね。

そう思って左腕を見て、びっくりした。

着ていたブラウスの袖が破けていて、そこから見える腕の皮が擦れて血だらけになっていた。

「えっ? こんなに・・・」

服が派手に破れていたことにびっくりして言葉にならなかった。

「それにね、高田さん。顔も血が滲んでるんだよ。結構擦りむいてる。痛くないの?」

永井くんは私の頬を指さして、

「この傷、綺麗に治るといいけど」

そう言って今度はハンカチを私の頬に添えてくれて、

「このハンカチで押さえとけば傷は隠れるから。ホテルに戻ったら傷をちゃんと手当てしよう」

「永井くんのハンカチが汚れちゃう」

「いいよそんなの。さ、行こう」

永井くんはそれ以上なにも聞いてこなくて。

バスまで私の隣を一緒に歩いてくれた。

バスに乗り込むと、綾乃と中島くんが私を心配そうに見ている。

「夏芽、転んだって言ってたけど大丈夫だったの?」

そう綾乃が私に声を掛けてくれた。

「う、うん。多分大丈夫。ちょっと擦りむいただけ。みんな心配かけてごめんね」

私は綾乃と中島くん、そして永井くんに謝った。