いつも側にいてくれたね



日本の三大夜景と言われている函館山から観る夜景は本当に綺麗だった。

≪いつか遥生とこの夜景を一緒に観たいな≫

函館山から撮った写真とメッセージを書いて遥生に送ると、遥生から秒で返事が来て。

≪おおー、夜景綺麗だな。帰ってきたら旅行の話をたくさん聞くから早く帰ってこいよ、夏芽≫

遥生からのメッセージに返事をしようと皆から少し離れた所まで歩き、スマホを操作していたら前から来た人にぶつかってしまった。

「きゃっ、ごっ、ごめんなさい」

顔を上げてぶつかってしまった人に咄嗟に謝ったんだけど。

その人はくるっと向きを変えて走って行ってしまった。

あ、ちゃんと謝りたかったな。

そう思った時、肩から下げていた私のトートバッグがいつの間にか消えていて。

走り去った人を目で追うと、その人が持って逃げて行った。

「あ! 泥棒!!」

私はその人を追い掛けようとしたんだけど、観光客が沢山いて思うように走れなくて。

あの人、わざと私にぶつかったんだ。

あのバッグの中には後で直生に渡そうと思っていたガラス細工のプレゼントが入っている。

あれは直生への感謝の気持ちを込めて買ったプレゼントなの。

どうしても直生に渡したいの。

とにかく追い掛けなきゃ。

私は人にぶつかりながらどうにか泥棒の背中を見失わないように追い掛けた。

展望台から下のフロアに駆け下りた泥棒は駐車場に飛び出すと1台の車に乗り込むところだった。

「待って! そのバッグ返して!!」

私はバッグに手を伸ばしてバッグの紐を掴んだ。

泥棒と私でバッグを引っ張り合っている時、その泥棒は半ドアのまま車のエンジンを掛けた。

絶対にこのバッグから手を離さない。

直生のプレゼントだけでも守らなきゃ。

車が急発進して、私はバッグを持ったまま車に引きずられた。

駐車場にいた人たちが騒ぎを聞いて集まってきて。

観念した泥棒は私のバッグから手を離し、それと同時に私の身体はアスファルトに叩きつけられた。