いつも側にいてくれたね



遥生のパソコンのキーボードを打つ音だけが聞こえる部屋で、私は遥生の背中を静かに見ていた。

ねぇ、遥生の好きな人ってどんな人なの?

ねぇ、その人とはお付き合いしているの?

聞きたいのに、聞くきっかけをどうしようか考えていた。

「はるき・・・」

目の前にいる遥生のことが遠い存在の人に思えてきて、無意識に小さな声で遥生の名前を呼んでいた。

そんな私の声を遥生は拾い、私に背中を向けたまま

「ん?」

と優しく返事をしてくれる。

「あ、なんでもない。間違えた、ごめん」

「ふっ、なんだよ間違えたって」

遥生はパソコンから目を離さず返事をする。

私はその問いに返事をせず遥生の背中から目線を移し、部屋に掛かっている遥生の学校の制服を見た。

もう入学式から何か月も経つのに、いまだに遥生がこの制服を着ているところを見ていないんだ。

遥生の制服を触ってみたくなってそーっと手を伸ばして触ろうとした瞬間、遥生が急に話をしてきたから思わず手を引っ込めてしまった。

「そうだ夏芽。来週俺の学校で文化祭があるんだけど、直生と来るか?」

遥生はキーボードを打ちながらそんなことを言ってきた。

「え! 文化祭って、楽しそう! 私、行ってもいいの?」

「他校の生徒も入場できるらしいぞ。来るか?」

「うん! 行きたい。行く!」

「必ず直生と一緒に来いよ。俺の学校広くて迷路みたいだから夏芽一人だと迷子になるし」

「なっ! 迷子になんてなりません。でも直生と一緒に行くね。わーい」

「ははっ。大人しくしてたかと思ったけどやっぱり夏芽はうるさいな」

「うるさいってさぁ、遥生がうるさくさせるようなこと言ったからでしょ」

そのまま冗談の言い合いに発展するかと思ったのに、

「絶対に直生と来いよ、夏芽」

そう静かな声で言われて、私たちの会話は終わってしまった。