遥生の学校の文化祭が終わり、その日から夏芽と遥生はお付き合いするようになった。

2人は今までと何ら変わらないような気がするけど、夏芽が僕の部屋に遊びに来る回数よりは遥生のところへ行く方が多くなるのを見ていると、本心はとても淋しかった。


「直生、修学旅行から帰ってきた頃から元気がないみたいだけど、どうかしたの?」

夏芽は僕のこともちゃんと気に掛けてくれて、いつもと少しでも違うと心配をしてくれる。

「何もないよ。僕は元気だし。それにほら、ちゃんと夏芽からもらったブレスレットもつけてるよ。これがあれば幸せになれるんでしょ?」

僕の腕につけているのは夏芽が危険な目に遭ってまで守ってくれた僕へのプレゼント。

ガラスでできた小さなクロスがついているブレスレット。

もしあの時、スリが刃物でも持っていて夏芽を切りつけていたりしたら。

そう考えただけで僕は僕が許せなかった。

ここで夏芽に万が一があってはダメなんだ。

あの時、僕が命をもらった意味が無意味になってしまうところだった。

最後に僕ができることは、夏芽と遥生を無事に短期留学させることだけだ。

異国の地で2人の仲が深まって欲しいと願って、あの時、一世一代の嘘をついたんだから。