雨が私と楓くん、ふたりきりだけの世界にしてくれているように感じる。
 予報にはなかったはずの土砂降りの雨に打たれながら、私はいま、楓くんに抱きしめられている。

「もう、離したくない」
 楓くんはぼそっと私の左の耳元でそう言ったから、私は楓くんとなら、このまま雨に濡れてもいいやと思った。