多額の借金があると、バレたくないからだ。
お金を貸したのであればどこかに借用書があるはずだ。

それを見つけ出せば金額だってわかるはず。
夏波は隣の引き出しを開けると中身を乱暴に外に放り出していく。

いつ伊吹が戻って来るかわからないし、片付けも大変になるけれど、そんなことかまっていられなかった。
次から次へとよくわからない書類を引っ張り出しては確認していく。

どうか母親の嘘でありますようにと、願いながら。
それから20分ほど家探しをしてみたけれど、借用書は見つからない。


「どこにあるの……」


元々ものが少ない部屋の中、隠し場所だって限られている。
それでも見つからないということは……夏波は視線を寝室へ向けた。

後探していないのは、あの部屋だけだ。
伊吹がよく眠れるようにアロマの準備をする以外には入らない寝室へ向けて歩き出す。

寝室のドアをそっと押し開けると。まずは中央のキングサイズのベッドが目に入る。
ベッドの左右にはそれぞれ小ぶりなサイドテーブルが置かれていて、奥は窓になっている。