極悪人の抱き枕になりました。

☆☆☆

スマホはまた元の場所に戻しておいた。
伊吹が隠し場所を変えてしまうかもしれないと、懸念したからだ。


「帰ったぞ」

「おかえりなさい」


今日も夜遅くに伊吹は帰宅して、またしても怪我が増えていた。
夏波はリビングにリサックス効果のあるアロマをたきながら手当をする。
一週間以上ここにいて、このやりとりが日課になりつつあった。


「怪我をせずに帰ってくることはできないの?」

「難しいな。今は組同士の争いが激しくなってて、むやみに外を出歩くこともできなくなってきてる」

「そんな……」


それならもうそんな仕事やめてしまえばいいのに。
そう思っても言えることじゃなかった。

自分はただ借金のためにここに連れてこられただけで、伊吹の生活に口を挟むことができる存在じゃない。


「ひとつ、疑問に感じてたんだけど」

「なんだ?」

「私はどうしてここへ連れてこられたの?」