極悪人の抱き枕になりました。

今の音、なんだか聞いたことがある。
それはスマホのバイブレーターによく似た音だったのだ。

夏波はすぐに書類を引っ張り出して引き出しの奥まで手を突っ込んでみた。
すると指先につるりとした感触がして、それを掴んで引き寄せる。


「私のスマホ!」


取り出した瞬間思わず声を上げてしまった。
まるで宝物を見つめた海賊にでもなったような気持ちだ。

伊吹はこんなところにスマホを隠していたのかと、呆れた気持ちになってしまう。
こんなところに置いてあったら、遅かれ早かれ夏波に気が付かれることになったはずだ。

念の為に玄関に鍵がかかっていることを確認して、スマホを表示させる。
大量の着信とメッセージは彼氏の中澤新からばかりで母親からは一件も来ていない。

落胆する気持ちを抑えつつ新からのメッセージを確認していく。


『夏波今どこにいる?』

『すぐに迎えに行くから、返事をしてくれ』

『頼むよ夏波。大丈夫なんだろう?』