「見たんだね、手紙」




昴が握りしめたままだった手紙を指差して言った。




「会いたくなかったって言ったの、嘘…?」


「ううん、嘘じゃない。…陽葵に会ったら、あの世に逝くのが嫌になるから。陽葵とずっと一緒にいたいって欲が出てきちゃうから。だから、会いたくなかった…」




悲しそうに笑う昴に、止まっていた涙が再び溢れ出す。




「私は…ずっとずっと昴に会いたかった…っ。何も知らないのに勝手に決めつけて、会いに行くのやめてごめん…。一番辛い時にそばにいてあげられなくてごめんね…っ」




昴は立ち上がると私をそっと抱きしめてくれた。


たしかに温もりはあるのに、この人がもうすぐ消えてしまう。




「死んでから最初は家に帰ってたんだ。だけど、憔悴していく母さんや父さんを見ているのが辛くて、俺はまだここにいるのに見てもらえないのが苦しくて、逃げるようにここにずっといたんだ。このまま俺は誰にも気づかれずにあの世に逝くんだなって思ってたら、現れたのが陽葵だった。陽葵は俺のことが当たり前のように見えていて、陽葵になら触ることができて、陽葵と過ごしている時だけは自分が死んでいることを忘れられたんだ。何よりもずっと会いたかった陽葵ともう一度会えたことが一番嬉しかった。やっぱり、最後に陽葵と会えて俺はよかった」




昴の背中に腕を回すけど、今まで触れていたはずの昴がスカッとすり抜ける。