「あ、そうだ。あの子のところにはお線香上げに行ったのかい…?」


「あの子?」


「ほら、ひまちゃんが幼い頃よく遊んでた男の子。名前忘れちゃったけど、ひまちゃん毎日その子の名前楽しそうに出してただろう?あの子、つい最近亡くなっちゃったんだってね…」


「…え?」


「あれ、お母さんから何も聞いてないのかい?」


「…え、待ってよ。あの子って…」




あり得ない。私が幼い頃遊んでいた男の子は、たった一人しかいない。




「昴…?」


「あ、そうそう。その子だよ。月城(つきしろ)商店の息子さん。よくそこに買い物に行くから奥さんと仲良くてね、昴くんのこともなんとなく聞いてたんだよ。病気でずっと戦ってたけど、つい最近、亡くなったって聞いてね…。ひまちゃんと仲良い男の子だったこと覚えてたから、なんだか悲しくて…。ちょうど今日で49日だったはずだよ」


「おばあちゃん、その月城商店って、どこ?」




そんなわけない。じゃあ私の前に現れた昴は?


昴が死んだなんて、そんなわけない。



頭ではそう考えるけど、思い返せばおかしかった。


どうして昴はいつだって制服だったの?学校に行っているはずなのに、どうして鞄一つ持っていなかった?


転がっていた違和感に、無意識に気づかないようにしていたのかもしれない。




「ここだ…」