夏がずっと嫌いだった。


暑くてセミはうるさくて、あの人を思い出してしまう季節だから。





陽葵(ひまり)、起きて。もうすぐおばあちゃんち着くわよ」




助手席に座っていたお母さんに膝を叩かれて、目が覚める。


まだぼんやりとする頭で窓の外に視線を移すと、視界いっぱいに海が広がっていて思わず感嘆の声を漏らす。



東京では、こんなに透き通った綺麗な海を見たことはない。この町に来たのも六年振りだけど、なんだか懐かしい気持ちになる。




「ひまちゃん、よく来たねぇ」


「おばあちゃん!」




東京で四年前に会ったきりだったおばあちゃんが家の前で待っていてくれて、抱きつく。




「お腹空いたでしょ?ご飯作ってあるから、手洗っておいで」


「うん!」


「陽葵、その前におじいちゃんに挨拶しなさい」




手を洗ってからお母さんに続いておじいちゃんの仏壇にお線香を上げる。