ブーツの力で、わたしは路地からビルの壁を蹴るようにして跳び、人目のつかない屋上にまで上った。


〈ねえちゃん、そのまま北に向かって〉

〈わかった!〉


イヤリング型インカムにもGPSが備え付けてある。

スマホで引ったくり犯との位置関係を確認している悠からの指示を受け、わたしはその場所へと向かった。


ついた場所は、廃工場。


〈手前の建物の中にいるみたいだ。慎重に〉

〈…うん!〉


わたしは2階の窓からそっと中に忍び込んだ。


スパイブーツはジャンプ力が上がるだけではなく、足音もほとんどしない。

気づかれないように引ったくり犯の男との距離を詰める。


柱の陰から顔をのぞかせると、1階に人影が見えた。


…いたっ!


思わず出そうになった声を呑み込む。


様子をうかがっていると、ちょうどハンドバッグの中をあさっているところだった。