それから、5分後。


「こ…これでいいのかな」

「おー!けっこう似合ってるじゃん」


わたしは路地裏の物陰でスパイコスチュームに着替えると、もじもじしながら悠の前に現れた。

着替えている間に、悠が100円ショップで買ってきた蝶のような形をしたパーティー用のメガネもかけさせられて。


「母さんも、こんな感じのスパイだったのかな」


そんなことを言う悠だけど、パーティー用のメガネのせいでスパイというよりは…マジシャンっぽく見える。

こんな格好で街を歩いたら目立つけど、幸い夕方で薄暗くなり始めていた。


それに、これはただのコスプレではなかった。


不思議なことに寒くもないし、かといって暑くもない。

少しジャンプしただけで、まるでトランポリンに乗っているかのようにふわりと高く跳ねる。