恋をしているのは内緒~報われないと知っているから~

「なんだよ、まだなにも頼んでないのか?」

「うん、初めて来たからどのお酒がいいのかよくわからなくて……」

 苦笑いをしながら小さな声でつぶやくと、相楽くんの長い指が伸びてきて、これだとばかりにトントンとメニュー表のとある場所を指し示した。

「モヒートにすれば? この店ではそれが一番人気らしい」

「じゃあそうする」

 爽やかなミントとフルーツの甘酸っぱさがマッチしたお酒だとメニュー表に書いてあるし、写真を撮ればSNSで映えそうなのもあって、モヒートを注文する女性は多いのだろう。

「お前、腹減ってるだろ? 飯は?」

「ローストビーフが食べたいな。あとはこの、厳選チーズの盛り合わせにする」

 スタッフに注文を済ませてしばらく待つと、コリンズグラスに入った綺麗なモヒートが運ばれてきた。

「へぇ、キウイが入ってるんだね。おいしい」

 本当は相楽くんと軽く乾杯をしたかったけれど、そんな雰囲気ではない気がして、ひとりでそっとグラスに口を付けた。
 ローストビーフとチーズも運ばれてきて、目の前が賑やかになる。
 
「相楽くんは、お腹すいてないの?」

「俺はこのあと予定があるから」

 ナッツをつまみながらウイスキーを飲む相楽くんの姿は直視できないくらいにカッコいい。
 だけどそんな彼は今夜誰かと会う予定があるらしく、ここで待ち合わせをしているのかもしれない。

「この店はよく来るんだけど、まさか会社の同僚に会うとは思わなかった」

「もしかしてプライベートを見られたくなかった……とか?」

「まぁな」

 左手で頬杖をつきながら、ニヤニヤとした顔をこちらに向けて相楽くんが私をじっと見た。