恋をしているのは内緒~報われないと知っているから~

「麗香は二歳年上で、俺が大学生のころバイト先で知り合った」

 年上だったのか、と薄明りの下で見えた麗香さんの顔をぼんやりと思い浮かべた。

「付き合って三年になる彼氏がいるんだけど、麗香は寂しいとすぐに不安になるみたいで。なにかあると俺を呼び出して愚痴を言うんだ。それがずっと続いている」

 説明を受けながら、最後の一文だけは納得がいかなくて小首をかしげた。
 今の言い方だと呼び出されるのはいつものことで、一度や二度では済んでいない。
 麗香さんにとって相楽くんは、恋人への愚痴を聞かせる相手でしかないというのだろうか。それではあまりにも彼がかわいそうだ。

「愚痴なら……同性の友達に言えばいいじゃない。どうして相楽くんをわざわざ呼び出すのか私にはわからないよ」
 
 麗香さんにはれっきとした恋人がいるのだから、彼女の中で相楽くんは恋愛対象ではないのだろう。
 ……いや、少しは好きなのかもしれないが、恋人を捨ててまで乗り換える気はないのだと思う。

「相楽くんも行かなきゃいいじゃない。またいつもの呼び出しだなって、連絡があった時点でわかるでしょ」

「伊月の言うとおりだよ。わかってるんだけど……泣いてると思うと放っておけなくて」

 相楽くんは自分でその理由に気づいているのだろうか。彼にとって麗香さんは特別で、心から好きだから突き放せないのだと。
 これは私の想像だが、麗香さんはかなりの依存体質のように思える。
 麗香さんと相楽くん、そして彼女の恋人を交えたこの歪んだ関係は、早めに改善したほうが三人のためだ。

「麗香の彼氏が来月シンガポールへ転勤になるらしい。で、すったもんだあったけど、ふたりは結婚するんだそうだ」

「結婚?! 麗香さんも一緒に海外で暮らすの?」

「そういうこと。ま、ハッピーエンドだな」

 目の前の相楽くんが力なく笑うのを見て、モヤモヤよりも切ない感情が(まさ)ってくる。
 彼は麗香さんの結婚を黙って祝福するつもりのようだ。