恋をしているのは内緒~報われないと知っているから~

 それから半月が経ち、相変わらず相楽くんは周りに誰もいないときを見計らって私にだけ素の部分を晒してくるが、それにもだんだんと慣れてきた。
 ニヤリと意味深な笑みを向けられても、またふざけている、と思えるようになっている。
 相楽くんも最初は私の反応が面白くてやっていたけれど、最近の私は驚かずに無視しているからつまらないだろう。
 それでも懲りずに仕掛けてくるのを見ると、正直彼がなにを考えているのかわからない。

「伊月」

 週末の金曜日、仕事を終えた私はオフィスビルから外に出ようとしたところで後ろから声をかけられた。
 振り返ると爽やか王子様の仮面をかぶった相楽くんが走り寄ってきていた。

「お疲れ」

「うん、相楽くんもお疲れ様」

 隣に並んだ途端、彼の声が一段低くなった。会社でしか見られない爽やかな相楽くんをもう少し堪能していたかったのに残念だ。
 
「お前、今夜空いてる?」

「いきなりなに?」

「実はお前に頼みがあるんだよ。話がてら飯行こうぜ。もちろん奢る」

「ちょ、ちょっと!」

 有無を言わせない威圧感で私の手首を掴んだのを見て、思わず抗議の声を上げた。
 こんな場面を誰かに目撃されて、おかしな噂を立てられたらかなわない。
 私は辺りをキョロキョロと見回しながらも、半ば引きずられるようにビルを出た。
 
「一緒に行くから、いい加減放して」

「逃げるなよ」

 念を押すようにそう言われ、私の手首が解放される。

「いったいどこに向かってるの?」

 頼みごとをする立場の彼が、なぜこんなに偉そうな態度なのかと心の中で毒づきながら、斜め後ろをとぼとぼとついていく。
 今夜空いているのかと聞かれて一瞬でもドキドキした私は大バカだ。