「すでに昨日泣かせてたよね。……彼女がかわいそう」
「待った。泣いてたのは俺のせいじゃないし、そもそも俺は麗香の彼氏じゃないから」
相楽くんの冷たい視線が突き刺さった。
部外者が知ったような口を利くなと言わんばかりの彼の表情を目にし、私は背筋が寒くなる。
「麗香にはほかに付き合ってる恋人がいる。昨日はそいつが泣かせた」
「そうなの」
「だから俺がどこで誰にキスをしようと、自由なんだよ」
背の高い相楽くんが少し屈み、意味深な視線で私を至近距離から射貫いた。
まさかこんな場所でいきなりキスされるわけがないとわかりつつも、私はおののいて一歩あとずさる。
すると彼はしてやったりとばかりに肩を揺らせてクツクツと笑った。
「そういう冗談はやめてってば!」
「俺、そろそろ営業部に戻らないと。じゃあまたな」
腕時計で時間を確認したあと、相楽くんは踵を返して颯爽と営業部のオフィスのほうへ歩いていった。
昨夜見かけた麗香さんという女性が彼の恋人ではなかったと聞いて、なぜかほんの少しだけホッとする自分がいる。
けれど相楽くんにとって彼女は特別な存在で、思いを寄せている気がしてならない。
そうでなければ、あんなに愛おしそうに抱きしめたりしないだろう。
彼がどこで誰になにをしようと私には関係ないし、文句を言う資格もない。
だけど私は気になって仕方ないのだ。
今まで会社で接していた彼がまやかしなら、本当の彼はどういう人間なのか。
チャラチャラと手当たり次第に何人もの女性と寝るような人だとは、どうしても思いたくない願望が私の心の奥底にあるから。
爽やか王子様の相楽くんがいなくなって自動的に失恋をした私だけれど、ワルい男を象徴するような素の相楽くんに、再び恋をすることもあるのだろうか。
……いや、それはない、とフルフルと首を横に振る。
男の色気をたっぷりと乗せた昨夜のキスは、しばらく忘れられないと思う。
だからといって素の相楽くんを好きになったらダメだ。感情や衝動に流されず、私は自分を律すると決めた。
「待った。泣いてたのは俺のせいじゃないし、そもそも俺は麗香の彼氏じゃないから」
相楽くんの冷たい視線が突き刺さった。
部外者が知ったような口を利くなと言わんばかりの彼の表情を目にし、私は背筋が寒くなる。
「麗香にはほかに付き合ってる恋人がいる。昨日はそいつが泣かせた」
「そうなの」
「だから俺がどこで誰にキスをしようと、自由なんだよ」
背の高い相楽くんが少し屈み、意味深な視線で私を至近距離から射貫いた。
まさかこんな場所でいきなりキスされるわけがないとわかりつつも、私はおののいて一歩あとずさる。
すると彼はしてやったりとばかりに肩を揺らせてクツクツと笑った。
「そういう冗談はやめてってば!」
「俺、そろそろ営業部に戻らないと。じゃあまたな」
腕時計で時間を確認したあと、相楽くんは踵を返して颯爽と営業部のオフィスのほうへ歩いていった。
昨夜見かけた麗香さんという女性が彼の恋人ではなかったと聞いて、なぜかほんの少しだけホッとする自分がいる。
けれど相楽くんにとって彼女は特別な存在で、思いを寄せている気がしてならない。
そうでなければ、あんなに愛おしそうに抱きしめたりしないだろう。
彼がどこで誰になにをしようと私には関係ないし、文句を言う資格もない。
だけど私は気になって仕方ないのだ。
今まで会社で接していた彼がまやかしなら、本当の彼はどういう人間なのか。
チャラチャラと手当たり次第に何人もの女性と寝るような人だとは、どうしても思いたくない願望が私の心の奥底にあるから。
爽やか王子様の相楽くんがいなくなって自動的に失恋をした私だけれど、ワルい男を象徴するような素の相楽くんに、再び恋をすることもあるのだろうか。
……いや、それはない、とフルフルと首を横に振る。
男の色気をたっぷりと乗せた昨夜のキスは、しばらく忘れられないと思う。
だからといって素の相楽くんを好きになったらダメだ。感情や衝動に流されず、私は自分を律すると決めた。



