「会社では演じるんでしょ? 今、素になってたよ。危ない」
「はは。スリルがあっていいな。それに、やっぱりお前は俺の本性をバラしたりしないわけだ」
今のは私を焦らせようとしてわざとやったみたいだ。
おかしそうに笑う彼の顔は、私がこれまで見てきた爽やかな笑顔とはまったく違っている。
「さっきサインを送ったでしょ。心配しなくても大丈夫だ、って。朝からわざわざ広報部まで確認しにこなくても誰にも喋らないよ」
「そっか、口止め料が効いたかな」
「冗談はやめて」
「てか、確認したいことはそれじゃないんだけど」
相楽くんがゆっくりと私に近づき、壁に寄りかかるようにして手をついた。
その行動だけでどうしようもなく心臓がドキドキしてくるから困る。
「泣いたのは俺のせい?」
「え……」
「あのキスは悪くなかったと思ってるけど、お前は嫌だった? だとしたらごめん」
今さら謝ってきても遅いし、やさしく接してくるのは反則だ。腹を立てなきゃいけないのになにも言えない自分が嫌になる。
「ああいうことは誰にでもしたらダメだよ。本命の彼女が知ったら、それこそ泣いちゃうよ」
「本命の彼女?」
「昨日、帰り道で見ちゃったの。髪の長い女性と路上で抱き合ってたでしょ」
相楽くんが待ち合わせをしていた相手はあの女性で、バーにいたのは時間を潰していたからだ。
スマホに連絡が来た瞬間そそくさと店を出ていったのも、彼女を待たせたくない一心だったのだと思う。
「ああ……麗香といるところを見られてたんだ」
名前なんか知りたくなかったのに、予期せず情報が入ってきてしまった。
あの女性は“麗香”という美しい名前らしい。
「はは。スリルがあっていいな。それに、やっぱりお前は俺の本性をバラしたりしないわけだ」
今のは私を焦らせようとしてわざとやったみたいだ。
おかしそうに笑う彼の顔は、私がこれまで見てきた爽やかな笑顔とはまったく違っている。
「さっきサインを送ったでしょ。心配しなくても大丈夫だ、って。朝からわざわざ広報部まで確認しにこなくても誰にも喋らないよ」
「そっか、口止め料が効いたかな」
「冗談はやめて」
「てか、確認したいことはそれじゃないんだけど」
相楽くんがゆっくりと私に近づき、壁に寄りかかるようにして手をついた。
その行動だけでどうしようもなく心臓がドキドキしてくるから困る。
「泣いたのは俺のせい?」
「え……」
「あのキスは悪くなかったと思ってるけど、お前は嫌だった? だとしたらごめん」
今さら謝ってきても遅いし、やさしく接してくるのは反則だ。腹を立てなきゃいけないのになにも言えない自分が嫌になる。
「ああいうことは誰にでもしたらダメだよ。本命の彼女が知ったら、それこそ泣いちゃうよ」
「本命の彼女?」
「昨日、帰り道で見ちゃったの。髪の長い女性と路上で抱き合ってたでしょ」
相楽くんが待ち合わせをしていた相手はあの女性で、バーにいたのは時間を潰していたからだ。
スマホに連絡が来た瞬間そそくさと店を出ていったのも、彼女を待たせたくない一心だったのだと思う。
「ああ……麗香といるところを見られてたんだ」
名前なんか知りたくなかったのに、予期せず情報が入ってきてしまった。
あの女性は“麗香”という美しい名前らしい。



