「であるからして、ヒートテックというものは極寒の地じゃなくても起きるものらしい。聞くに、風呂場と脱衣所の温度差をできる限りなくすことで防げるものだという。テレビのコメンテーターも戦々恐々としていたぞ。ヒートテック……、一体いままで何人の人間が犠牲になってきたのか……」

目の前の友人がヒートテックについてあつく語っている。

明らかにヒートショックとヒートテックをいい間違えているが仕方がない。
彼は地球歴一ヶ月。
俗にいう地球外からやってきた知的生命体である。

彼の胴体は透明なので、向こう側の壁にはっている学校の時間割り表も透けて見える。
頭部はないが、スラッとした手足はその胴体からのびている。
無駄にハスキーな声で、ヒートテック、恐ろしいな、と独りごちているが、発声器官も唇も歯もない。
どうやって声を出しているのか一度尋ねて説明してもらったが、理解不能だったためもう二度と尋ねないと誓った。

「テレビみるのはいいけど、お父さんとお母さんに見つからないでよね」

そんな地球外生命体に棲みかを提供している人間  シホは、高校二年生である。

言葉の習得は早かった。
漫画や書物、ニュース。それらで