「起きたか。大地も都子も三時間くらい連続で寝ていたぞ。ふたりとも疲れていたんだな」

私の手に大地を渡し、ミルクを作ってくるという要さんを押しとどめ、大地に授乳した。私自身、授乳の間があくと乳腺が張って苦しい。
大地もお腹が空いていたようだ。たくさん飲むと、またぐっすり眠ってしまった。
こういった疲れた夜は、あまりにスムーズに眠ってくれて驚いてしまう。それだけ最近の出来事は大地にも負担だったのかもしれない。

温かく小さな身体をベビーベッドに寝かせ、私はベッドに腰掛ける要さんに向き合った。窓から差し込む月の光で要さんの顔が照らされている。

「本当は夕食を食べながら話すつもりだったんです」
「ああ」
「要さん、私と結婚してください」

ストレートな言葉に要さんが驚いた顔になる。それから、ゆっくり目を細め、ささやくように尋ねる。

「俺をおまえの夫に、大地の父にしてくれるのか?」
「はい。私があなたにいてほしい」

そう言って私は彼の胸に飛び込んだ。柔らかく受け止めてくれた要さんは、それからしっかりと背がしなるような強さで抱擁を返してくれる。

「都子、長く待たせてごめん」
「こちらこそです」
「幸せになろう」
「はい」

唇が重なる。やわく、そして情熱的に。
何度も何度も繰り返し、キスを交わす。
シーツに沈み、互いの肌が月光に青白く浮き上がるのを夢のような心地で見た。
一年ぶりに私たちは身体を重ねた。二度目の逢瀬で、夫婦としての誓いの夜だった。