麻里佳さん名義の慰謝料請求の通知書は要さんのもとにも届いていた。岩切家の実家宛てに届いたそうだ。

「こんなものが通らないのは猪川社長だってわかっているはずだ」

その晩、要さんは私に報告しながら、苛立ちを隠さず言った。

「都子の実家を調査してわざわざ送り付けているあたりも、嫌がらせの側面が強いだろう」
「麻里佳さんは何か言っていますか?」
「連絡を取りたいんだが、メッセージに返信がない。電話も出ない。妊娠中も監視していたような親だからな」

もしかすると麻里佳さんは軟禁状態なのかもしれない。連絡を取れるものはすべて取り上げられているのだろうか。

「ともかく、おじいさんに謝罪をしたい。俺も午後には戻るから、話し合って理解を得よう」
「ありがとうございます。あちらの家が勝手に言っていることだとわかれば祖父も納得すると思います」
「どうだろう。騒動に巻き込んだのは事実だ。おじいさんは都子を任せるに値しない男だと思ったかもしれない」

要さんが感じた不安は、私が会長と奥様に会う前の不安より強いかもしれない。男同士として、私と大地を任された責任も感じていたはずだ。

「私は要さんといたいと思っています。祖父にはわかってもらいたい」
「都子、ありがとう」

大地を抱いた私をしっかりと包み込むように抱きしめてくれる。
三人の幸せを守りたい。だから妨害には負けないし、大事な人にはわかってもらいたいのだ。